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腹証の問題点

腹証の問題点

小川新

  1. 経時的観察:腹証という空間的な場において経時的観察が欠けているので、実証性の少ない腹証となる。
  2. 虚実:腹証において腹壁の抵抗を腹圧として虚・実・虚実間という虚実論で腹証を弁ずることは、傷寒論金匱要略の古典医学の本流から言えば外れているようだ。腹証の一部分では有用であるのみだ。腹圧を中心として、漫然と虚実を論ずることの弊害は実に大きい。このような曖昧な虚実論が、日本漢方の特徴として外国に伝えられと、白地の布に墨で字を書いたように、それを消し去って寒熱を語っても、少々の努力では消し去らない現状は、最近訪れた上海中医薬大学で確かめたことである。
  3. 胸証:胸証なくしては腹証は完結しない。このことは腹証研究の初めから常に気になっていたことだが、幸い「腹証奇覧」「腹証奇覧翼」には図をもって胸証が記されているので、このことを参考にして研究を進めてきた。結果から言えば、腹証から胸証へ、胸証から腹証へ、胸証と背証、腹証と背・腰・臀証というふうに人体を上下前後から触れるべきである。
  4. 脈証:脈証は、胸腹証と如何なる関連があるかを観察する必要がある。さらに傷寒卒病論集の末尾に近く、「按寸不及尺、握手不及足、人迎・趺陽・三部不参」と言って張仲景は二千年も前から嘆いているのに、中国でも日本でもこのことに無関心であることは何ということであろうか。脈診のみの弁証は不完全であると説いている。そこでは、脈証と胸腹証との相関関係的弁証は不可能になるのです。
  5. 寒熱:近代の腹証論は、『傷寒論』『金匱要略』を中心として発達しながら、虚実論を中心とした腹証論に偏向し、寒熱という基礎理論に基づく腹証の研究が疎かしている。

以上5項目に亘る古典医学、特に日本漢方的腹証の問題点を述べた。

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