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薬と毒/宮沢賢治「よく利く薬とえらい薬」

[広告]月刊誌「ナショナルジオグラフィック日本版」

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“薬らずして、病気らずして、らずして如何なる医療があるのだろうか ”

薬と毒

小川新(Ogawa Arata)

宮沢賢治「よく利く薬とえらい薬」
良薬と毒薬(ばらの実のはなし)によせて

宮沢賢治の短編集の中の「よく利く薬とえらい薬」という童話を読みました。

親孝行の清夫少年が、病気の母親の薬を求めて、ばらの実を集めるために毎日森へ行きました。その時にはつぐみやふくろうなど、みんな清夫がばらの実を持って帰るのを応援するような言葉を少年にかけました。

「今日もお薬をおとりですか。お母さんはどうですか。ばらの実はどうですか。ばらの実はまだありますか」

と、皆それぞれに声をかけます。

ある日、清夫が一所懸命、実を集めるのですが疲れてしまい、ぼんやりと立ちながら、一粒のばらの実を唇にあてました。この一粒の実が、不可思議な薬力を持っていたのです。身体の中の全てを洗ったようになり、眼ははっきりし、耳もよく聞こえ、いろいろな匂いまで実に一々手にとるようでした。手に持っていた一粒のばらの実を見たら、それは雨の雫のように綺麗に光って透き通っているのです。清夫は飛び上がって喜んで、風のようにうちに帰り、母親に飲ませました。母親は、今までの病気もどこへやら、急に身体がピンとなって喜んで起き上がりました。

一方、町には非常に欲深く、偽金つかいを生業とする大三という者がおり、最近体の調子が良くなく、そのばらの話を聴くと、早速探しにいきました。しかしいくら探しても見付けることは出来ません。それで、自分の科学的合成技術を利用して、似通った類似品を合成したのです。それは透き通ったばらの実のようでした。大三は喜んでこれを飲みましたが実はひどい毒薬で、それを飲んだ大三は死んでしまいました。

学識のある人の中には、人の力でも作り出せると思う人がいるようです。浅識盲目の人は、それによくだまされてしまいますが、この場合は、本人自身が猛毒とは知らずに飲んで死んでゆくのです。薬と思って、毒とは知らずに服んだからです。

一般の人達の中には、毒と薬との区別がつかない人がいます。特にここ二、三十年間位、厚生省と製薬メーカーとやメーカー御用学者などが一緒になって、薬事審議会を運営し、妄りに薬が製造販売されいる。医者は自信をもって投与し、患者は不安をもたずにのんでいる。長期使用による薬毒のことについては、甚だ無関心であることには驚くばかりです。私からみれば、薬物の長期使用が、巨大な人体実験場のように思えてなりません。

いまの世の中、偽者の偉い人、偉そうな人が多いのです。私の言う偉そうな人というのは、無智の人にとっては偉く見える人で、ほんとうに智慧のある人からみれば間違いだらけを世に振撒いているのであります。

この世の名声と、この世の富を求めて、知識を集めている人です。世に言う学識経験者も、骨格のしっかりした見識からすれば、実に馬鹿げたことが多いものです。

独りよがりの妄想の中に安住してはいないか。真実の心を失うことは、どんなに大きな罪つくるか、いつも私たちは考えていなければなりません。

正しい心を持ち続けるためには、どうしたら良いかを考えることです。

薬と毒〜えらい薬

いま我々を取り巻いている現実は、一見してよく効くようだが長期に亘り服用すると副作用で人を害する薬が多いのです。賢治の言う「えらい薬」という部類に入るのでしょう。

こういう薬は自然の薬というより、ほとんど人工的に作られた化学薬品が多いのです。今日、世間が効くという薬はこのようなものが多く、知らず知らずのうちに自らの身体を害しているのです。

今回は、血圧を下げるための薬『降圧剤』を例にしてこの事をより具体的に申し述べます。

高血圧症の場合、特に本態性高血圧症は原因が分からないから本態性と言っているのです。

実のところなぜ血圧が高くなるかといいますと、腎臓の機能が低下して小便の排泄が弱くなり次第に血圧が高くなることが多い。
ただ最高血圧(収縮期血圧)が高いとか、最低血圧(拡張期血圧)が高いからその血圧を下げるのだという理由で、本当の原因がはっきりしないまま、また真の原因があるとも想像しないで闇雲に降圧剤を飲み続けると、最高血圧は下がるが、最低血圧は何年飲んでも高いままで低下もせず、次第にその薬の副作用に悩まされることになる。 
これは無明の医学でありましょう。

私は三十数年間、東洋伝統医学に学びながら、人を害することの多い降圧剤を用いることなくより良い高血圧治療は何かを求めてきました。
原因不明の本態性高血圧症の研究を続けてきて幾つかの事に気付きました。

  • 高血圧は腎臓の働きが大いに関係しておること。
  • 腎機能の臨床検査で分かることがいかに少ないか、つまり腎機能検査では腎機能が悪化した腎不全に至るまで分からないこと。
  • 降圧剤が腎臓を傷めるなどの副作用のあること。この事に大きな問題があるのです。
  • また脳に関しては、降圧剤で最高血圧を下げ脳出血は予防できるが脳梗塞を起こし易くなる。
  • 心臓では、高血圧症と伴に動悸や不整脈のような心機能に異常のある患者に降圧剤を漫然と与えると忽然と心筋梗塞を起こし死亡することが多い。
  • またこれからも増えつづけるであろう老人性痴呆症を誘発することが多いのです。

しかし遺憾なことには、医師も患者もこれらの副作用を想像することは殆どなく、医師はその原因を作りながら全く省みないでいる。

降圧剤では最高血圧は下がるが最低血圧は容易に下がりません。高血圧症の場合一番に問題になるのは「最低血圧を如何にして下げるか」という事です。
最低血圧と腎機能は関係が深い。
最低血圧を考えるとき大切なことは腎機能が正常かどうか、どのような異常があるかを見きわめる事です。

だが現在の腎臓医学ではこのような微妙なことは分かっていません。
しかも腎機能検査は未だに発達しておらず、現代の医師たちは腎臓のことを十分把握していない。

この降圧剤を長期に亘り服用すると脳梗塞を起こしやすくなる。
腎機能の低下で高血圧になっているのに、腎臓を治さずただ血圧を下げる目的のために降圧利尿剤を使い続けると腎臓を傷め、やがて腎透析患者になるのです。少なからずの腎透析患者はこの為と思われる。

腎臓病患者数は五十万人、予備軍を含めると百万人、腎透析患者が日本全国で約二十万人(2000年現在)に達し、毎年およそ一万人増え続けており、慢性透析の療費は一兆円を越えている。
このことは腎臓病学が余りにも粗末で高血圧症や腎機能障碍とは何かということが分からないことの証明になっているのです。(また新に糖尿病性腎症による腎透析患者が増加の傾向がある)

私の経験では、降圧剤で血圧を無理に下げない事がよい結果となる事が多い。
この「偉い薬」の結果はある者は脳梗塞、ある者は心筋梗塞、腎透析、腎不全に落ちていき、或いは落とされていくのです。

私は己の五感による診断を大事にしています。
脳血管障碍に関していえば、現代医学で使われておる検査機器や検査方法では、もうすでに起ってしまった脳障碍しか分からない。
しかし人間の五感、あるいは感性による東洋伝統医学的な診断法、診察法ではこのことは予測可能です。

例えば、手指の感覚による頸(くび)の脈診と手首の脈(寸脈)を比較することにより、現在の状態と将来起こるであろう脳や心臓の血管障碍を知ることができ、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞の予防と治療の助となります。
この脈診法は既に二千数百年前から知られ、その重要性は二千年前の「傷寒論」(中国伝統医学の書)に説かれています。
しかし残念なことに、伝統医学の世界ですらこの研究は全く無視されています。

医療の現場においても、因縁、因果を知ることが如何に大事であるかを知り、そのためにどのように精進するかが問題だ。
薬を知らずして、病気を知らずして、人を知らずして如何なる医療があるのだろうか。
私の言う「妙法医学」とは真実を見抜く智慧を持った医学であり、その智慧のない医学は外道の医学です。
(終わり)

小川新(2000年5月)

【ノート】
==「妙法医学」の“妙法”とは====
妙法
・妙=正しい
・法=真理=ダンマ(パーリ語)/ダルマ(サンスクリット語)=仏が体得実現する智慧、境地
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