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四物湯及び類方の腹証

[広告]月刊誌「ナショナルジオグラフィック日本語版」

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第4回瘀血総合科学研究会_1985年
四物湯及び類方の腹証
小川新

四物湯の腹証は老若男女を問わず甚だ多いにも拘らず、日本漢方界の古方家に無視されている傾向がある。

目次
1. はじめに
2. 四物湯の文献的考察
3. 症例による四物湯腹証の概要
4. 定型的四物湯の腹証について
5. 桃核承気湯との鑑別について
6. 加減法について
  『医方集解』にみる加減
7. 腹証を基礎として加減した随証療法について
  1) 加茯苓白朮沢瀉例
  2) 加猪苓沢瀉例
  3) 加艾葉阿膠例
8.合方ないし兼用した随証療法について
  (四物湯併証の腹証について)
  (1)下腹について
   1) 猪苓湯との合方
   2) 桃核承気丸兼用
  (2) 上腹について
   A. 心下に腹証の異常があるとき
    1) 四物湯との合方
    2) 補気建中湯との合方
    3) 柴芍六君子湯との合方
   B. 胸脇に腹証異常があるとき
    1) 小柴胡湯との合方
    2) 四逆散との合方兼桃核承気丸
  (3)三焦の清熱を目的とするとき
    1) 温清飲
    2) 柴胡清肝散(一貫堂)
    3) 龍胆瀉肝湯(薛己)
    4) 龍胆瀉肝湯(一貫堂)
    5) 清肺四物湯(小川新命名)
9. 総括
10. 結語

1.はじめに
瘀血の腹証については『瘀血研究第2集』において、腹診の基本的方法と下腹の部位について述べ、とくに当帰芍薬散のそれ(腹証)について近代諸家の腹証論や『腹証奇覧』及び『腹証奇覧翼』の腹証図について意見をのべながら、私の腹証図の概要を述べた。しかし患者の腹部に直接画いた腹証図に比べ白紙に画いた腹証図は在来の漢方の腹証図の如くいかにも現実感覚が薄く甚だ理解し難いものになった。

そこで、このような欠点を埋めるために、日本画の墨絵の手法を用い濃淡をもってこれを表現してみた。筆者の意をご理解して頂きたい。
では四物湯を中心とした腹証論を展開してみたいと思う。

2.四物湯の文献的考察
四物湯は婦人諸疾患を治する聖薬とされている。それは『和剤局方』(婦人諸病門)にでてくる処方であることから、一般にそのように信じられるようになったと思われが、一般に月経異常、不妊症、血の道症、産前産後症などに主として用いられ実際に効果をあらわしたからであろう。

『傷寒論』『金匱要略』をみると四物湯類方として、四物湯(当帰・川芎・芍薬・地黄)に艾葉、阿膠を加えた芎帰膠艾湯、及び四物湯に人参・白朮・茯苓・甘草・生姜・大棗・防風・白蘞・桂枝・柴胡・桔梗・杏仁・豆巻・神曲・麦門冬・阿膠・山薬を加えた薯蕷丸の2方のみである。

しかし、地黄のはいったものとしては、千金翼炙甘草湯(炙甘草・桂枝・生姜・麦門冬・麻子仁・人参・阿膠・大棗・生地黄)、百合地黄湯、防已地黄湯、八味丸、大黄しゃ虫丸、黄土湯(甘草・熟地黄・白朮・附子・阿膠・黄芩・黄土)、千金三物黄芩湯(黄芩・苦参・乾地黄)などであるが、地黄の入った処方で頻用されるものは八味丸、炙甘草湯、黄土湯と少い。

しかし私は実際には日常臨床の場で、四物湯加法または合方を無視しては治療医学が成り立たないことを痛感している。特にこれは現代の難病に対する治療方剤として欠かせないものであると思う。

『牛山方考』には「此方は血虚栄弱、一切の血病、婦人調経、補血の本薬也」とあり、清時代の汪昂は『医方集解』の中で「一切の血虚及び婦人の経病を治す」と言い、「これ手の少陰、足の太陰、厥陰の薬なり」と述べている。浅田宗伯は『勿誤方函口訣』で「此方は局方の主治にて薬品を勘考するに、血の道を滑らかにする手段なり。それ故血虚はもちろん、瘀血血塊の類、臍腹に滞積して種々の害をなすものに用うれば、譬えば戸障子の開閉にきしむものに、上下の溝へ油をぬる如く、活血して通利を付けるなるなり。一概に血虚を補う者となすは非なり」といっている。

曲直瀬道三の『衆方規矩』補益通用の項には、四君子、八物湯、十全大補湯、帰脾湯、人参養栄湯と共に四物湯が述べられているが、そこには「血虚発熱、或は寒熱往来、或は日晡に発熱頭目清からず、或は類躁して寝ねず、胸膈張り、或は脇痛を治す。一切補血の本薬也」とあり、方剤名が付けられない位に多くの加減法がのべられている。このことは先の『医方集解』と同様である。衆方規矩の補益通用の処方で四物湯が入らないのは、四君子湯、帰脾湯のみである。

〈略〉もっと見る

  3. 症例による四物湯腹証の概要
  4. 定型的四物湯の腹証について
  5. 桃核承気湯との鑑別について
  6. 加減法について
     『医方集解』にみる加減
  7. 腹証を基礎として加減した随証療法について
    1) 加茯苓白朮沢瀉例
    2) 加猪苓沢瀉例
    3) 加艾葉阿膠例
  8.合方ないし兼用した随証療法について
    (四物湯併証の腹証について)
    (1)下腹について
      1) 猪苓湯との合方
      2) 桃核承気丸兼用
    (2) 上腹について
     A. 心下に腹証の異常があるとき
       1) 四物湯との合方
       2) 補気建中湯との合方
       3) 柴芍六君子湯との合方
     B. 胸脇に腹証異常があるとき
       1) 小柴胡湯との合方
       2) 四逆散との合方兼桃核承気丸
     (3)三焦の清熱を目的とするとき
       1) 温清飲
       2) 柴胡清肝散(一貫堂)
       3) 龍胆瀉肝湯(薛己)
       4) 龍胆瀉肝湯(一貫堂)
       5) 清肺四物湯(小川新命名)

〈以上略〉

9.総括

(1)定型的四物湯の腹証の概要を述べた。四物湯の腹証論については、さきに『瘀血研究』第3において略説した所であるが、このような腹証論は、本邦で最初ではないかと思う。
(2)四物湯加減方とその臨床例について述べた。
(3)四物湯の下腹における傍証に対する合方方剤とその臨床例について述べた。
(4)四物湯と上腹部即ち心下及び胸脇に異常のある腹証に用いる合方方剤の臨床例について述べた。
(5)三焦(上・中・下焦)の清熱と四物湯について、合方剤である温清飲、柴胡清肝散(一貫堂)及び龍胆瀉肝湯(一貫堂)と龍胆瀉肝湯(薛己)、清肺四物湯(小川新)の臨床にいて述べた。
(6)今回は主として、四物湯の腹証として、触診によってつかみうる顕在性のものについて述べたが、四物湯を投与することによって圧痛・抵抗を顕す非常に古い潜在的の四物湯証があることを経験している。このことについては別の機会に述べる積りである。

10.結語
四物湯の腹証は老若男女を問わず甚だ多いにも拘らず、日本漢方界の古方家に無視されている傾向がある。筆者のこの論文を参考にしていただき、御批判、御叱正を賜われば、幸甚と存ずる次第である。

小川新(Ogawa Arata)
(第4回瘀血総合科学研究会_1985年:「四物湯及び類方の腹証について」) 

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