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ある女性行者の乳癌死

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この女性は嘗て山口県のある病院で乳癌切除手術を受けたが、その五年後に同じ場所に癌が再発した。それから十年ほどして私と出会った。

彼女はこの十年間一切医者に診てもらう事はなかったと言います。
その癌腫瘍は直径が7、8cmの大きなもので、この癌からかなり大量の出血があり貧血の為に顔色も蒼白くなっていた。そこで漢方薬である芎帰膠艾湯のエキス剤を潰瘍の上に振り掛けることにした。

それから二、三年後、島根県温泉津のお寺の行事でお会いした。その時すでに癌が腰や背骨に転移したらしく痛みを訴えられ、その痛みは次第に増しているようだった。

彼女は、「私は、仏の行者としてを生きてきましたが、このような病気になって苦しみながら臨終を迎えるのでは残念でなりません。この病気の終末期にはよろしくお願いします」と真剣に頼まれたのです。

私は、「はい」と言って軽く引き受けたものの、よく考えてみると、そのような事はお寺のお上人に頼まれたほうが良いのにと思いました。しかし私に医師としての鎮痛治療を期待されているのかもしれませんでした。

それから七、八ヵ月たった頃、彼女の家人から電話があり、重篤であるので一度診療に来てくださいと言うのです。私はこの電話の様子から臨終が近いと思い、早速その日の夕方大田市の自宅を訪ねた。みると苦渋に満ちた顔でした。

法華経陀羅尼品には薬王菩薩が法華経説法者を守護すると釈尊や十方の諸仏に約束されています。
この経を読誦すれば何とかなるであろうと思い、私は祈りの中で陀羅尼神呪を誦することにした。

少し病状を聞いてから方便品・壽量品を読誦し薬王菩薩の神呪に入り、「あに、まね、まねい、ままねい、しれい、しやりて、・・・」
と誦しているうちに、薬王菩薩が私の前にお立ちになっていることに気付き、これは薬王菩薩が私をして神呪を誦させておられるのではないかと思いました。

それは経験しかことのない不思議なことでした。きっと薬王菩薩がこの行者を病苦からお救い下さる。それならば、今唱えている神呪は薬王菩薩だけでよいと思い、これを三回繰り返しお題目を十数回ゆっくりと唱えて私の祈りを終えたのです。
その間二十分足らずでした。

このお勤めで彼女の痛みは何とかなるであろう。しかしあまり自信はありませんでした。本人とあまり話すこともなく、この世の最後の別れを告げる気持で帰路についた。

それから二週間ほどして、その後の様子を家人にうかがってみると、あれから三日三晩全く苦痛も無く安らかに熟睡し四目目に目を醍まし、いよいよ臨終も近づいたので、菩提寺である恵珖寺の加藤上人にお願いしてお経を上げていただき、そして静かに寂光浄土に旅立たれたそうです。

by_小川新(1999年)

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