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乳幼児のアトピー性皮膚炎(胎毒下しを中心に)

乳幼児のアトピー性皮膚炎(胎便と胎毒下し)

新生児に対し、なぜ胎毒下しが必要なのであろうか。それは伝承された英知として現代も世界各地で行われている。

しかしどういうものか、ヨーロッパ医学の進歩している国々では少なからず無視されている。日本もその一つである。産婆学の科学的な進歩は喜ばしいことである。しかしその反面英知を喪失していることに気付かないでいるのは、まことに嘆かわしい。

ある時、産科を主に産婦人科を開業している某県の日母の会長をしている友人に胎毒のことを尋ねると、「君、近代の産科はそのようなことは必要ないよ。近代設備が完全に備わっている○○市民病院を見てごらん。分娩時の新生児が飲み込んだ物は胃から完全に吸引することができるようになっているから大丈夫」と言う。

そこで私は次のように反論した。

「分娩時の汚物を吸い込んでいれば吸引も必要なことだが、私の言う胎毒は主として脱落した腸粘膜(古典では腸垢という)を言うのです。皮膚と同じよ うに腸粘膜は毎日新生し、脱落していることを考えて下さい。それは生理的に胎内でいつも行われているのです。君の話はどうも胎児の病態生理を知らないよう ですね」。しかし友人はそれでも納得してくれなかったのである。

現代のアトピー流行は、この胎毒下しを行わないことに大きな原因がある。胎毒の少ない子供は母乳を飲みながら自然に排泄するが、これだけではいけな い。一度胎毒下しを行っておかなければ、一二週間ないしは一二カ月ごろからアトピーが出ることが多い。そこで初めて治療に入るのだが、私はアトピー性皮膚炎とは呼ばずに「胎毒性皮膚炎」と呼んでいる。

その治療は、胎毒下しの方剤を加減したものを用いており、簡単である。しかしこの乳児の皮膚炎をステロイド使用による治療で誤魔化していれば、その 後二三十年というように長期にわたり疾病に悩むことになる。そして皮膚のみならず、あらゆる疾患を誘発する原因ともなる。胎毒には催お血性があり、幼少期 から一生にわたりいろいろな疾患を生む。乳幼児期の一番大切な時に体内毒物の排泄を怠っているためたいへんなことになるのである。

1. 胎毒下し生薬構成

胎毒下しは、初乳を飲ませる前に一二回飲ませれば理想的であるが、産院分娩の場合、ヘビールームと母親とが隔離されているので、多くの場合退院後に服用することになる。

胎毒下しの原方
大黄*g、黄連*g、甘草*g、紅花*g、連翹*g

(胎毒下しは上記分量を煎じ、ガーゼなどに浸して吸わせるとよい)

2. 年齢ごとのアーピー性皮膚炎処方
(注意事項は必ず参照のこと。症例2,3,7は胎毒下しを基本とする処方である)

※注意事項
1)胎毒下しは大黄が入っているため、便軟らかく回数の多い乳児には、大黄を去ること。
2)下痢気味の乳児では、五苓散を主としてそれに茵陳蒿、荊芥、連翹、紅花を加える。
3)大黄の入った胎毒下しでも茵チン蒿を少量加えるとよく治る。それは現代の新生児は黄疸気味であることが多いためである。在来の胎毒下しだけでは、アトピーの予防および治療が完全でないのはこの理由による。
4) 大黄の入った胎毒下しを、漫然と一二週間服用することは禁忌である。それは脱水症状を起こすためである。大便の出かたによって一二日の頓服的服用が重要で ある。特に生後一〜二週の間にアトピー予防として服用する場合は、一日だけでよい。下した後下痢が治まらない時は、五苓散エキスを服用する。
5)清熱作用を強める目的として、十薬、茵チン蒿を加えるとよい。
6)外用として、中黄膏、紫雲膏(当帰抜き)を適宜用いる。ステロイド離脱時の重症例には、甘草*gの煎じ液をガーゼ等で塗布する甘草湿布が有効である。

・1ヵ月
症例1:黄疸(光線療法、交換輸血後)。喘鳴。鼻閉。
処方  [茵チン蒿湯エキス%g半夏瀉心湯エキス%g]×7週投与のあと[1/6茵チン五苓散加連翹%g川芎%g甘草%g荊芥%g蒼朮%g紅花%g黄連%g]x5週

・2ヵ月
症例2:顔に湿潤性湿疹。便秘(3日に1回)
処方  [大黄*g紅花*g黄連*g連翹*g甘草*g]、1週投与のあと[*四苓湯加黄連*紅花*荊芥*甘草*連翹*]×1週

症例3:耳・顔に湿疹。黄疸。便(1~2日に1回)
処方  [大黄*紅花*黄連*連翹*甘草*茵チン蒿*]x3週

・4ヵ月
症例4:顔首肩に湿潤性湿疹。軟便。新生児黄疸。
処方  [茵チン五苓散加連翹*黄柏*甘草*荊芥*十薬*紅花*]×7週

・6ヵ月
症例5:眼周囲・肘・背中・胸に湿疹(軽度)
処方  [連翹*白朮*川芎*紅花*黄柏*黄連*山梔子*甘草*]×24週

症例6:顔・首に湿疹
処方  [連翹*蒼朮*川芎*紅花*山梔子*甘草*茵チン蒿*十薬*]×7週

・1歳
症例7:体に時々皮疹。便少し硬。陰嚢水腫。
処方  [大黄*紅花*黄蓮*連翹*甘草*]×3週

・1歳8カ月
症例8:そう痒感。かぜで喘息。便秘(2~3日に1回で硬い)
処方  [連翹*,荊芥*,紅花*,大黄*,川芎*,黄芩*,黄連*,黄柏*,白朮*,甘草*]x2週

・5歳
症例9:手足の湿疹。生後8ヵ月の頃、臀部を中心に湿疹。喘鳴。がい嗽
処方[1/3竜胆瀉肝湯(薜己 セツキ)加茵チン蒿*十薬*]×3週

症例10:背中から肩にかけ皮疹。そう痒感。
処方:[連翹*荊芥*甘草*十薬*茵チン蒿*紅花*桔梗*]x現在投与中

by小川新_2000年9月_[ 掲載「東洋医学」第28巻第9号 ]

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